電車で見かけるあの子
電車でだいたい前と同じあたりに座る。
その日は結構空いてて俺の両脇が空いていた。
前と同じように鞄から文庫本を出す。栞の挟んであるページを開きながら、いつもの3倍も遅いペースで本を読む。
あと二駅。
あと一駅。
あの子の駅…!
結果、あの子は、乗って来なかった。
当たり前だ、そんな都合の良いことが起こるはずがない。
少し落ち込みながら、深く深呼吸して、落ち着いた気持ちで本を読み始めた。
本に没頭して周りの声が気にならなくなってきた時、車両から車両へ移動する人の声が聞こえた。