電車で見かけるあの子



何と無く、あまり意識せずに声のする方を見る。

奇跡が起きた。

あの子が他の車両から、やってきた!


久しぶりに見たあの子は前のように、むしろ前よりもキレイで、元気になっているようだった。


けれど、喜ぶことばかりじゃなかった。
はじめは気が付かなかったが、あの子は男と手を繋いでニコニコしながらそいつと話してた。

彼氏いたんだ…

そりゃああんな可愛い子だもんな…

途轍もなく落ち込みながら、なんとか平静を装って本を読んだ。
静かな車両ではカップルの少し大きい楽しげな声は良く響く。

声は俺のところまで聞こえた。

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