電車で見かけるあの子



「電車ギリギリ乗れて良かったね〜」

『な、もう出ちゃうかと思って焦った〜』

あの子はこんな声してたんだ、
声まで、この子を意識し始めるきっかけになった子に似てるなあ

それに、なんだ、ギリギリで乗ったから車両が違ったのか。


「めちゃくちゃ走ったから疲れちゃった〜、座らない?」


あの子の提案に男は頷いてそうしようかと返す。
でも2人の周りには二人が並んで座れる席はない。


あの子はえーっと、、と言いながら席を見渡し始めた。

俺はさっと端によけて二人分の席をあけた。
すると、ここにしようかーと言いながら彼女が彼の手を引いて俺の方へやってきた。
近付くと彼女は俺の方に向き軽くお辞儀しながらありがとうございますと言った。

座れるよう席を空けたのを気が付いていたらしい。ちゃんとお礼をすっと言えるなんて、やっぱりいい子だなあ
にやけないよう口元に力を入れ、俺も軽くいえっと会釈して返した。


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