電車で見かけるあの子


“あ、いや、わたし”

急いでないからどうぞ、そう言うつもりだった。
でも途中で言葉が詰まった。ずっと見続けてきた人の顔が目の前に来たから。


飛び出た友だちを掴んだ彼は、友だちの腕も引き寄せて私の方を向いて

「すんません」

軽く頭を下げた。
私は、ドキドキてして顔が真っ赤になってくのが自分でもよくわかった。
そして、喉から声を絞り出して言った。


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