梅雨の終恋
言っていることは分からないけど、的場クンは、川野サンにハチマキを差し出していた。
……いやだ。
見ていたくない。
そう思うのに私の足は動かなくて……その場に座り込んだ。
分かっていたのに。
完全に私の片想いだったのに。
それでも、好きなヒトが目の前で、他のヒトに告白している姿なんて見たくなかったよ。
……気づけば、アッタカイモノが私の頬を伝った。
「……なに泣いてんの?」
いきなり、上からした声に驚き、その方向を見ると、
的場クンが、窓から顔を覗かせていた。
「……川野サン、は?」
私がそう訊くと、彼はハチマキを見せてくれた。
……受け取ってもらえなかった、ってことはフラれたんだ。
そう、確信していると、彼は、右手で右耳に触れた。
あぁ、的場クンは落ち込んでいるんだ。