地味男と地味子の㊙︎事情

「ならいいけど…」

そう言って彼はあたしを見た。

「あたし、何か付いてる?」

「うん…桜が」

急いで取ろうとすると、彼はあたしの手首を掴んだ。

「⁈」

「あっ、ご、ごめん!でも…」

まっすぐあたしを見る瞳は、とても綺麗で…

「綺麗なのに…取ったらもったいないなって…」

優しく笑う彼は、今にも儚く消えてしまいそうで。

この一瞬で落ちてしまった。

何分か前まで、縁がなかった、恋とやらに。
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