秘め恋*story1~温泉宿で…~




ーーーー




「んー…んまい。」



結局、売店で適当につまみになるようなものを買いあさって部屋でひとり酒。



本当は上司へのお土産だった地酒。



はぁ、この佃煮と合いますなぁ。




「…はぁ。酒井くん…」




もう自分でも引くね。



酔ってるのもあるけど、無意識に彼の名前を呼んでしまった。



なにやってんのよ、私。



恋なんて最近無縁だったから、ちょっと感覚が鈍くなってるだけだって。



こんなの恋とかそんなんじゃないさー…



お猪口に残ったお酒をぐいっと飲み干す。



なんか回ってきたかも…
ふにゃーとする身体をテーブルに預ける。



その時、



ーーーーーーコンコン。



「葉月さん、あの、酒井です。
失礼して宜しいですか?」



ぼーっとする頭でも、そう問いかける声に反応した。



酒井くん?



え?何で?




「どうぞ?」




とりあえず、そう声をかける。
心の中で密かに待っていた彼が部屋へ入ってきた。



静かに戸を閉め、ぺたんと畳に座り込んだ私のちょっと離れた所へ彼は座った。




「すみません、こんな夜遅くに…」




酒井くんは上目遣いで伺うように私を見つめた。


ダメだって、そんな可愛いことしちゃ。
酔っぱらいのおばちゃんがドキドキしちゃうじゃん。




なんて事を思いながら、笑って“別にいいよ”って言ってあげるとこれまた嬉しそうな顔が返ってきた。




その表情の意味は…?


考えようにも一気した酒の力が上回る。




「1人で…呑んでたんですか?」




酒井くんの目線がテーブルの上に散らかるおつまみやお酒類に…。。



最悪じゃ…君だけには見られたくなかったのに。



哀れすぎるでしょ…私。




「ちょっと寝れなくてね。」




半分は本当で半分は嘘。




「酒井くんはどうしたの?あの女の子達とワイワイやってたんじゃないの?」




お酒だけじゃないことたのしんでたんじゃないの?



連れていかれた時、まんざらでもない顔してたじゃない。



ここにきて、
この年代の酔った時の悪いクセが出てきた。






















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