秘め恋*story1~温泉宿で…~
空になったお猪口に気づいて、お酒の瓶に手を伸ばす…
でも、それは呆気なく邪魔される。
「呑みすぎです、葉月さん。」
酒井くんにお酒を取り上げられる。
「返して?私、まだまだ呑みたいの。」
「ダメです。もうやめた方がいいです。」
「もう。大丈夫だって。
まだ酔ってないからっ……」
駄々をこねる子どもみたいの私は酒井くんからお酒の瓶を奪い返そうとする…
その瞬間。
「もう、こんなに赤くなってるじゃないですか。それに目もすごく潤んで…」
確かに赤くなってる頬。
そこに感じる酒井くんの体温。
お酒を取り返すはずが、近づいて一時停止。
酒井くんが私の頬に触れてる?
「お茶…淹れますから。葉月さんが眠たくなるまで私が話し相手になりますから。」
だからお酒はもうおしまいです、と言って酒井くんは部屋にあるミニキッチンへ行ってしまった。
頬にまだ酒井くんの触れていた感触が残っていて…私はひとりぽけーっとしてしまっていた。
あの可愛い酒井くんがまじめな顔して私を叱った。
悲しいじゃない。
ムカつくじゃない。
…やばい。ズキュンってした。。
チラッとお茶を淹れる酒井くんを盗み見。
それだけで胸がきゅんきゅんしてしまう。
「葉月さん?」
お盆を手に酒井くんがきょとんとした表情ですぐ横に立っていた。
見つめすぎた…おバカ。私。
「あの子達はいいの?」
受け取ったお茶を一口啜りながら、横に座った酒井くんを見る。
「きちんとお断りして失礼してきました。
あまりお客様とお酒を呑んだりとかは…怒られちゃうので。」
「そっか。」
やっぱり思ってた通り。
優しくてまじめな子だなぁ。
「酒井くんなんか天然な感じだから、私てっきりあの子達に食べられちゃってるのかと思った。」
私が苦笑いでそう話すと、酒井くんはハハッと笑って“さすがに逃げますから”って。