南の空

仕事はすぐ覚えた


キャストもスタッフもみんないい人ですぐ馴染めた


でも、全部全部そううまくいくわけでもない


初めての夜の仕事は想像以上に大変な仕事だった


言ってしまえば毎日24時間仕事


フロアの中でお酒を作るのも仕事


胸の谷間と太もも見せて色目使うのも仕事


毎日自分を磨くのも仕事


客と話すのも仕事


帰って連絡先を好感した客と連絡取りあうのも仕事


オーナーやボーイ、キャストと上手くやるのも仕事


そんな毎日毎日学校そっちのけで出勤していくにつれてだんだんと自分が壊れていくような気がした


人に平気で嘘がつけるようになった


偽りの愛を口にできるようになった


人の目ばかりを気にするようになった


自分自身を見失ってもそれでいいと、自分がなくなった


でも心は痛まなかった


全部自分のため、人のためと見せかけた自分のため


自分を押し殺して新しい自分を作る


そんな私は操り人形のようだった


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