ほころぶ桜の花
「それじゃ、これに着替えて」
………ん?
「これって……男装?」
目の前の男は当たり前だと言わんばかりの顔をしていた。
「ほら、はやく着替えてくださいよ!」
「えっ、作戦教えてくれるんじゃないの?」
「作戦って……それだよ?」
着物をさして言った。
「……え?」
「もう、物分り悪いな。それに着替えて逃げる以外他ある?」
「え。」
え、まさかの強行突破ですか……
「もっと確実な……」
「前逃げた君が何言ってるの。後ろ向いてるから早く」
まぁ、前も逃げたけど………
「だって…失敗したよ、この前も。その前も」
男装して逃げたもん。
また捕まっちゃうに決まってる。
「…前までは1人だったでしょ?手伝ってあげるから」
そう言って頭を撫でてくれた。
この人、案外いい人なのかもしれない。
………なんて思った。
思ったのに………