ほころぶ桜の花
「え?」



小さな声が聞こえた。



ふと下を見ると、僕を睨んでいた。




「諦めない!私はあそこから出てみせる。絶対幸せになってやる。……絶対に諦めない」




なんて意思の強い子だ。




「今日がダメだったからって明日が失敗するとは限らない」

「芸妓の脱走ってまずいんじゃないの?」

「まずいよ。でも、私は“霧里”だから」



あ、そっか。
霧里は人気者だからね。

稼ぎ頭にひどい仕打ちをするとは想像にしくい。




「でも脱走を繰り返すとそのうちひどい目に遭うよ?」

「それでも、何もせずにただ言いなりになって生きるのは嫌なの。…ご迷惑をおかさました。島原に戻ります」




そう言うと、何事もなかったかのように歩きはじめた。
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