キスに秘められた大粒の涙
それから30分弱が過ぎた頃、玄関の扉の開く音に気がついた。

私は急いで玄関に駆け寄る。


「晃、おかえり」


「…ただいま」


「晃、大丈夫?」


「え、何が?」


「もしかして、夏海さんに脅されてるんじゃないの?」


「は?鈴に関係ねぇーだろ
全然違うから」


急に荒れた態度を見せる晃。

何だかいつもの晃じゃない。

怖い、怖いよ。


「ごめん」


「それより荷物取りに来ただけだから」


「え…?」


「今日から夏海の家に泊まることにした」


「そっか
あ、でも桜道は一緒に行ってくれるよね?」


「うーん
わかんねぇ!行けたらいく感じ
取り合えず急いでるんだ」


「あ、ごめん」



そして私は晃の荷物を手渡すと、晃は声を私に掛けることもなく、玄関を飛び出していく。



私はただ晃の背中をボーッと見つめていた。

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