キスに秘められた大粒の涙
それから暫くして、目的地の場所に到着した。

着いた瞬間…
優しく肌を包むように温かくて、ちょっぴり肌寒い風が
花粉とともに辺りを散らす。



「ここだ!!
着いたぞ、鈴」


風間さんが指差した場所は、紛れもなく私の住んでいるマンションだった。



私は、幻でも見てるのだろうか。

それに"鈴"って、なぜ呼び捨てなのだろう?


女慣れしてる感じがして、少し腹立たしく思ってしまう。



「ここって私の住んでいるマンションだよね?」


「あ?」


風間さんは、なんのこと?と 言わんばかりに、しかめっ面の顔をしている。


あ、やっぱりこれはまぐれなんだ。


私は、浅い夢を見てるんだ。


夢だったら、早く覚めたいよ。



「これは夢じゃねぇぞ
俺は鈴に、催眠術かけてないしな」


「そっかぁ」


え!!ちょっと待って!!

地味に私の心が読まれてるー


しかも風間さんの言葉によって
現実に引っ張られたー。


「取りあえずさ、そこに突っ立ってないで早く行くぞ」


「あ、はい」


「それとも何だ?
お姫様抱っこして連れて行って欲しいか?」


「ちょ」


私はあまりにもおかしすぎて、次第に笑いが込み上げてきた。

飲み物を飲んでいなくて良かった。


あまりにも凄まじくて、吹き出してたかもしれない。
まるで私を笑わせたくて、コントでもしてるかのよう。


お姫様抱っこって
風間さんは、白馬の王子様って設定なのかな。


「ふ~ん
本気にしてんだ?」


「してない」


「バレバレ」


「うるさいよ」


「俺を本気にさせた鈴が悪い」


またそうやって"鈴"って
呼び捨てにするし…


そう思っていた直後…
風間さんは私を優しく抱き締めて、体を直ぐ様離しては、


唇にキスしてきた。


柔らかい。



これがキスなんだ。



初キス…



いやいや。
自惚れちゃダメー!!
現実を見て!!!



わ、私は、今日会ったばかりの人に
キスされてるーーー。

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