愛してる。とか言わないで
長く伸ばした髪はボサボサになって、元々細い方ではあるが、ひどく痩せていた。



俺の方を向いた亜美佳は殴られた跡があり、くまができ顔色も悪く目は赤く充血していた。



「友也…」



震えながら座りこんでいる亜美佳を起こしながら俺は連れて逃げようと考えた。


婚約者らしい男は、一見きちんとしていて穏やかそうに見えた。



「あ…すいませんね。ちょっとケンカになったもので、なぁ…亜美佳」



さっきまで車で暴れていた奴と同一人物とは思えない。



「亜美佳の知り合いの者です…あの、今日のところは家に連れて帰るんで」



俺は亜美佳の手を引っ張って走った。



「おい…!亜美佳!」



男が叫ぶと亜美佳はビクッとして足を止めた。



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