愛してる。とか言わないで
莉子にもう何も喋らせたくない。

決定的な言葉を聞きたくない。


「行ってあげて…。亜美佳さんには友也しかいないんでしょ?私は…私は友也がいなくても大丈夫だから」


それって…


どういう意味…?



予想して心の準備をして、自分を守ろうとした俺は一瞬にして頭が真っ白になった。



「友也…ごめんね」


どんな準備も意味ない。

莉子にこんな顔させておいて、俺は…

馬鹿だ。


「私は友也が大切に想うものを同じように大切にはできないよ。そんな私と一緒にいても苦しいだけだよ…私も苦しい」



俺は視界がぼやけていくのを感じた。



莉子は、このままではどうにもならない二人にひとつの決断を下した。


莉子にこんな役割をさせてしまった俺は、最低だ。


「ごめん…最後まで、莉子に甘えてごめん…」



最後まで…



俺ははっきりすることができなかった。



「友也が大好きだった…今までありがとう」



莉子はそう言って、走って映画館を出た。



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