愛してる。とか言わないで
恋がこんなに突然訪れるなんて、思いもしなかった。


でも恋に落ちる準備なんてできないから。


「日向ちゃん、おはよう」


家を出ると王子が立っている。



「おはよう…」



うつむいて挨拶した私の顔を覗き込んで、

「行こうか」


って優しく言ってくれる。


並んで歩いてみると、案外背が高いんだ。


王子に気を取られていたけど。

かなり注目されてる?


それなのに王子は涼しい顔をしてる。


気にならないのかな。



だんだん恥ずかしくなってきた私は、少し離れて歩こうとした。



すると、私の手をそっと繋いで、



「人は人だよ。周りの目を気にして恋もできないなんて…絶対俺は嫌だから」



ギュッと手を握った。



周りの目を気にするあまり、ちっとも楽しめてなかった日々が、急にキラキラしたものに変わっていく。



「ありがと…」




私は顔を上げて歩いた。



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