愛してる。とか言わないで
この踊り場も、もともとは友也と光輝先輩の溜まり場のようなものだった。


手すりにもたれる友也の手首に目がとまった。


「友也先輩、いつもつけてたブレスレット…今日はつけてないの?」



つけてない日なんてなかったのに…



「あぁ…もういいんだ」



表情が少し曇った。


聞いちゃまずかったかな…


「亜美佳…元カノ婚約したって聞いてさぁ」



婚約…?


年上の人かな。



「結婚て…どうやっても手が届かなくなる気がしてさぁ…」



淋しそうな横顔に、胸が締め付けられそうだ。



「私が、先輩の淋しさ埋めてあげる」



思わず友也に抱きついていた。



「お前なら、ほんと埋めてくれそうだよな…」


そんな私を受け入れるように、友也がそっと腕で私を包み込んだ。


友也のこの一言で、私は空も飛べちゃいそうな程、舞い上がった。


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