夏の名前
4.
祖父母宅に着いて時計を見ると、7時5分。
親戚はまだ誰も起きていない様だ。
統子はそっと、部屋に戻った。
親戚の子供達は皆寝ている。
手持ち無沙汰を感じた統子は、鞄から本を取り出した。
朝日が眩しい庭先へ移動し、端に座って本を開く。
暫くページを進める。
そして、ふと朝日を見上げた統子は、早朝に出逢ったあの少年の事を思い浮かべた。
彼の名は、池内速斗。
この土地の少年らしく、日焼けしていて、逞しい感じがした。
無造作と言うより、無頓着なのであろう髪型。
シンプルな服装。
引き締まった体つき。
統子の目にはそのどれもが新鮮で、清々しく写った。
ここでのモノクロの日々に1つ、彩りが添えられた気がした。