夏の名前
まだ早い時間であったので、暫くは歩いていくことにした。
途中、昨日の早朝に偶然彼女と出会った場所を通る。
そう言えば、今日も会う約束をしたのだ。
速斗は少し焦った。
昨日の記憶を呼び戻す。
───「…同じ時間に…」
多分彼女は5時にあのベンチに居るだろう。
会えば話し込んでしまうかもしれない。
その前に走っておこう。
勿論彼女には会いたかったが、本分は走ることだ。
その意識は揺らいではいけない。
気を取り直して歩く。
川に着くと、速斗は上流に向かって走った。
ひんやりした空気と僅かに覗く朝日は速斗にとって新鮮で、この時間帯も良いかもしれないと思った。