夏の名前
歩いたり、走ったり、速斗は適度に体を動かして過ごした。
もうすぐ約束の時間。
しかし、残りの十数分を過ごすのが思いの外難しい。
仕方なくベンチのある方向へ向かうことにした。
ベンチで待ってればいいだろう。
走って約束の場所に近付いていく。
遠目に、誰かがベンチに座っているのが分かった。
こんなに早い時間に…
誰だろう…
不思議に思いながらも、その場所へ向かって走る。
おんなのひと…
不意にその人が立ち上がり、辺りを見回す様な動きをした。
そしてその女性は明らかにこちらに向かって手を振った。
────統子だ。
統子への距離を縮めながら、速斗は自分の脈拍が上昇しているのを感じていた。