夏の名前
9.
午前中は落ち着かなかった。
都会からきた人にとってはあまりにもお粗末な所に連れていくのは気が引けた。
統子は楽しみな様に振る舞ってくれたが、市街地の実際を見れば落胆することは火を見るよりも明らかであった。
やろうと思っていた課題も手につかず、結局すぐに時間は過ぎていた。
「あ゛ーーーーー…」
今更ながら、速斗は畳に寝転って、気後れしていた。
しかし、いつまでもうだうだしているわけにはいかない。
体を起こして、やらなければならないことが以外と沢山有ることに気付く。
シャワー浴びて、服着替えて…
「……服、決まってねえや…
どうしようか…」
抑、速斗はあの統子の都会的な装いに見合う服を持っていない。
今更新しい服を買う暇は無い上に、何を買えばいいのかさえ分からない。
速斗は諦めて、いつもの服で行くことにした。