夏の名前
"12:58"
ゆっくり行ったつもりだったけど、自転車は存外速く、着いても未だ統子は来ていなかった。
女の人を待つのは、速斗にとって初めてだった。
待っている間、心拍は一割以上上昇し、手先は血が回らない感じがした。
スニーカーにジーンズに空色の無地のワイシャツそれからキャップ。
かなり田舎臭いのはいつものことなので、何も思わなかったが、何しろ統子の隣にいる自信がない。
統子に会いたい気持ちと、会いたくない気持ちの狭間で、速斗は揺れていた。