夏の名前
いくら待っても時間はなかなか過ぎない。
応接間で親戚の人達と甲子園を観ていようかと思ったが、色々聞かれるのが嫌で結局辞めた。
この家は夏でも涼しい風が吹いている。
壁に凭れて、ウォークマンをかけ、本を読んだ。
統子の好みは近現代小説だ。
しかし、そこそこ多くの本を読んできたので、この夏、新しい分野に挑戦しようと思っている。
ここには小説を五冊と、新書を二冊持ってきた。
小説は早くも読破してしまったので、統子にとって初めての新書を読もうかと考えていた。
しかし、このような気分の下がる所で、真面目な文章と向き合うのも気が向かなかったので、結局、また同じ小説を読んだ。