夏の名前
自分の畳んだ布団の上にシャツが見えた。
夏期休暇に入って直ぐ、母親に買ってもらった。
色合いは同世代の子が着るには少し地味な感じだけれど、統子はとても気に入っていた。
自然と口角が上がる。
さっと着替えて、髪を結ぶ。
日焼け止めを塗る。
化粧とアクセサリーは止めておこうと思ったけど、腕時計と、シルバーの控え目のブレスレットを重ねた。
統子のお気に入りのこの腕時計は、東京の祖父母がイタリアのベネツィアへ行ったときのお土産だ。
文字盤の周囲にあしらわれたベネツィアガラスがとても可愛らしく、統子は毎日着けていた。
約束の時間が待ち遠しかった。