夏の名前
祖父母宅に着く前に、タクシーがふと止まった。
「…ん?」
「あ、すいませんここで。
はい、ありがとうございました。」
父親がタクシー代金を払っている。
統子が前を覗いてみると、そこには、祖父母と母親の兄弟など、親戚一同が並んで立っていた。
タクシーを降り、荷物を受け取る。
皆がこっちを見ていて、統子は恥ずかしく感じた。
「皆様、お久しぶりです。
わざわざお出迎えありがとうございます。
なかなか帰ることが出来ないでいて申し訳ございませんでした。」
父親が親戚に簡単な挨拶をすると、皆がこっちへ近付いて来た。
「統子ちゃん、よぉ来たねぇ。」
「統子ちゃん、きれいになってぇ。」
「統子ちゃん、早ようお上がり。」
誰かが統子の荷物を持ってくれた。
親戚に追い立てられているかのように、祖父母宅までの道のりを歩く。
祖父母宅に着けば、皆に祖母特製のゼリーケーキが振る舞われる。
久々のゼリーケーキは格別だった。