夏の名前
「…この地域の方…ですか?」
「いえ、東京から来ました。」
「あ、そうでしたか…
今から…どちらへ…?」
「…あ、
昨日、ここへ来たばかりなんです。
それで朝、早くに目が覚めてしまって…なんとなく、出てきてしまいました。」
「…そうでしたか。
僕は…川の方へ行きます、
…ご一緒…しませんか?」
速斗は自分にこんなことを言える頭が備わっていたことに、感慨を覚える。
しかし、すぐに後悔する。
彼女にしたら、知らない田舎で急に声を掛けられて迷惑だろう。
速斗にとって耐え難い沈黙。
「──いいんですか?」
「…あ、はい!
勿論です!」
彼女はまた、ふわりと笑った。
速斗の脈拍が1割上昇した。