夏の名前
聞けば、彼女の名前は、白石統子という。
速斗は緊張しながらも、会話を続けた。
結局その朝は、走ることなく、川沿いのベンチでずっと話をしていた。
速斗はあまり自分から話すような性格では無かったが、彼女は真剣に聞いてくれた上に、すごく楽しそうに笑ってくれたので、次から次へと話題が尽きることは無かった。
気が付いたら6時半で、普段ならそろそろ自宅に戻る頃。
こんな時間まで引き留めてしまった。
申し訳ないと言うと、彼女は、
「とんでもないです。
速斗君とお話しできて、とても楽しかったです。」
と言ってはにかんだ。
朝日を反射する真っ白いワンピースと同じように白い彼女の肌に、速斗はドキドキした。
気が付いたら速斗の顔は真っ赤。
けれど速斗は肝心な自分の気持ちについて、説明できるだけの経験を持ち合わせていない。
速斗がどうしようかとなやんでいると、統子が言った。
「そろそろ帰ります?」
「あ、 はい…。」
速斗の返事がなかなかだったが、その真意を知らない統子は、家に向かって歩き始めた。
しばらく2人で黙って歩く。
統子の祖父母宅が近くなり、分かれ道に差し掛かったとき、速斗は統子に言った。
「…また、 会えるよね…?」