天体望遠鏡の向こう
男は鞄の中に入った、通帳や金目の物の重量を確認しながらそっと窓を開けた。
夏の夜風が吹き込んでくる。
そして風と一緒に入ってきた虫の声が、静まり返った家の中でやけに大きく聞こえ、男の心臓を跳ね上がらせた。
ゆっくりと、窓の隙間を広くする。
鏡のようになっていた窓ガラスに映った自分の姿が、夜の景色へと変わっていく。
完全に開いた窓の外に、ふと目に入ったものがあった。
これは…。
大きな、天体望遠鏡だった。