天体望遠鏡の向こう
その天体望遠鏡は、その存在感とスコープの光沢で、ヒトの未知の宇宙、美しく広い星空への好奇心の大きさを表しているようだった。
思わず、それに見惚れる。
ふと、昔のことを思い出した。
なにも考えていなかった少年時代。
確かあのころは天文学者になりたかった。
彼の星好きは、父親譲り。
星を愛する二人で、よく夜空を見に行ったものだ。
「……!」
気がつくと、盗んだものの入った鞄を置いて天体望遠鏡を抱えている自分がいた。
何をやっているんだ、俺は。
苦笑いして天体望遠鏡を置く。
望遠鏡を盗む泥棒が、一体どこの世界にいるというのだろう。
鞄を手に取り、今度こそと身を外に出した。
「うおおおおお!おりゃあああ!!」
また男の子の寝言が聞こえたが、今度は気にせずに外にでた。