天体望遠鏡の向こう
「星、見える!?」
そしてベランダに立った男に、そう声がかけられた。
「…え?」
ゆっくりと振り返り、真後ろに立っている男の子を見て、男は愕然とした。
まずい。
ここで騒がれたら、今までの行動が全て水の泡になる。
頭の中がどんどん焦っていくだけで、体は全く動かない。
しかし、そこで男の子がした反応は男にとって予期せぬものだった。
「早く!朝になっちゃうよ!!」
なんと、男の子は泥棒である男の手を引いて部屋を出ようとしたのである。
「お、お前…自分が何してんのかわかってんのか!?」
男が思わずそんな問い掛けをしてしまうほど、男の子は自然に男の手を握ったのである。
男の子はイライラしながら、
「何寝惚けてんだよ!今日はたつや達と流れ星見に行くんだろ!!」
と怒鳴る。
「は?は?」
訳がわからず、男の頭の中に『?』マークがいくつも浮かぶ。