天体望遠鏡の向こう
「もおお!早く!!星が流れ終わっちゃったらどーすんだよ!!そしたら、父ちゃんのせいだからなっ!!」
父ちゃん。
男はその言葉を反復した。
父ちゃん。
そして、確信した。
この男の子は、自分を父と勘違いしていると。
寝ぼけているせいか、星が見たくて仕方がなく周りが見えていないだけか。
それとも、単なる馬鹿か。
とりあえず危機を免れた男は、男の子の言うがままに部屋を出て行った。
その星を見るという場所に行くまでに、いくらでも逃げ出す機会はあるはずだから。
男は薄く笑うと、鞄を持って男の子のあとをついていった。
「何やってるんだよ父ちゃん!望遠鏡持っていかないでどうするんだよ!!」
「あ、すまん」
男の子のあまりにもすごい迫力につい頷いてしまうが、男はすぐにはっとして、
「ちょ、自分のものは自分で持っていけよ!!」