天体望遠鏡の向こう
こんなものを持たされていたら、思うように動けないし鞄も持てない。
「何言ってんだよ!俺子供だろ!!そんな重いもん持てるわけねーだろ!!」
よっぽど早く行きたいのか、思い通りにならない男に地団駄を踏む。
「なんだお前!その態度!!」
思わず男が怒鳴ると、男の子は一回びくっとしてから、しぶしぶといった様子で言った。
「じゃあ、俺が父ちゃんの鞄持つよ!!それならいいだろ!?」
ふんっと言って男の鞄をひったくる。
「ちょ、おまえ…」
「もー、いいだろっ!!俺行くから!!」
男に選択肢はなかった。
仕方なく、望遠鏡を持って男の子のあとを追う。
望遠鏡の腹には、へたくそな字で『流星の!!』と書かれていた。
男の子の名前だろうか。
どのタイミングで逃げ出そうか考えながら、男は流星を追って家を出た。