天体望遠鏡の向こう
「みんな父ちゃんに会うの楽しみにしてるぜ!初めて見るからって!」
「…そ、そうか」
男はびくりとした。
そうなのだ。
このばかな流星が気づかなくても、流星の友達が気づくかもしれないのだ。
今の流星の言葉で、彼の父親の顔を知っている者がいないということがわかったが、その可能性が存在していたことに気づかなかった自分が恐ろしく情けなくなった。
そんなことは露知らず、流星ははしゃいでいる。
「ほらほら!もうすぐ河原だぜ!うおおおお、超楽しみだぜ!!」
寝言と同じような奇声をあげて、男の黒い鞄をぶんぶんと振り回す流星。
そのなかに、自分の家の財産の一部が入っているとも知らずに。