先回りはしたくてしてる訳じゃないんですけど!
そんなんじゃ、足りない
なんで、どうして!
どうして彼は相変わらず、いつもと変わらず私に興味がないのでしょうか!
この前はプリン事件で彼の愛情が垣間見れましたよ?
とっても嬉しかったですよ?
でも、でも、それ以外の日常はなーんにも変わらない……
とうとう来月は私の27歳の誕生日…
このままだと私からプロポーズしてしまいそう…
だって、一緒に生活するのは結婚しても同じだし、
それなら早く結婚して彼は私のものですーーーって世間にアピールしまくりたい!!
それに、それに、彼の子供だって早く欲しいし、私子供は3人産むって夢があるし、彼との子供は可愛くて仕方ないと思うの!!
そんな事を考えながら夕食の片付け中の私です。
「……はぁ。」
幸せな想像をしていたら、幸せなため息が口から溢れた。
「…今日は一緒に風呂入らなくて良かったのか?」
彼が丁度お風呂から上がったようだ。
「うん。今日はいいの。」
笑顔で言ったが真っ赤な嘘だ。
彼と一緒にお風呂に入りたくて仕方なかったが、今まで『押せ押せ作成』がうまく行かなかったため、『押してダメなら引いてみよう作成』を今日から始めることにしたのだ。
「……ふーん。」
彼はやっぱり興味無さそうにしながらテレビの前にあるソファーに座った。
私も片付けが終わってからお風呂に入り、上がるともう彼はソファーにはいなかった。
寝室に行くと、彼の頭が布団の中からちょこんと出ている。
可愛いな。なでなでしたーい!
そんなことを考えながら彼の横に体を滑り込ませ、彼の胸に擦り寄った。
……幸せ~
「……菜々美、暑い。」
彼は私から離れたいようで、肩に手を置かれるとグイッと体を離される。
そしてその瞬間私は思い出したのだ!
今は絶賛『押してダメなら引いてみよう作戦』実施中であることを!
あぁ、でも彼にくっつきたい…
彼とくっついてないと安心できない…
頭の中で葛藤していると、隣からは静かな寝息が聞こえてくる。
え!もう寝ちゃったの!
やったぁ!
寝てたらいくらくっついても大丈夫だよね!
わーい、いっぱいくっついちゃえ!
******
「菜々美、起きろ。もう、朝だぞ。」
「……え?……あさ……?」
もう朝なの?
さっきまで寝てる彼にくっついて勝手にいちゃいちゃタイムを満喫してたはずなのに…
何故か体が妙に重くて起き上がれないでいると、急に彼が私に覆いかぶさってきた。
突然の展開にかなり動揺してしまう。
だって、彼が迫ってくるなんて滅多にないからいまだに免疫がない。
「政孝……どうしたの?あの、……朝だよ?」
「朝からしたらダメなのか?」
「だ、ダメじゃないけど…時間あんまりないよ……?」
「菜々美は俺のこと好きだろ。」
「…うん。すき……」
「だったら何も問題ない。」
彼はそのまま私の顎を持ち上げるとキスを…
―ぱちっ
ん?
んん?
目を開けると真っ暗。
なんだ、夢かぁ……
それにしてもいい夢だったなぁ
隣にいる彼に擦り寄って再び目を閉じた。
*****
何故か今日は彼女が風呂の邪魔をしてこなかった。
珍しい日もあるものだ。
しかも、朝のキスもお帰りのキスもされていない。
拍子抜けしながらも、寝る前になればくっついてくるだろうなと想像しながら、政孝はベッドに横になった。
しばらく寝付けないでいると、彼女が隣に横になる。
暖かくて柔らかい体、尚且つ彼女の使うシャンプーのいい香りが政孝になんの躊躇いもなく擦り寄ってきた。
可愛い。
抱きしめたい。
このまま俺のものに……
政孝は自分の胸に擦り寄っている彼女の顔を自分の方へ向けさせようとした途端我に返る。
危ない危ない。
多分彼女は今日から一週間くらいはダメな日なのだ。
直接言われた訳ではないが、今日は一緒に風呂にも入ろうとしなかったし、多分ダメなのだ。
多分…
直接彼女に確かめようかとも思ったが、それも何か嫌だったので、自分の体の変化に気付かれないよう仕方なく彼女と距離を取る。
彼女は不満そうだが、政孝はそれどころではない。
今日は彼女から誘ってくることはないだろうからさっさとやり過ごしてしまおう。
政孝は彼女に背を向け寝たふりをする。
だが、一旦熱を持ってしまった体はなかなか眠りにつこうとしてくれない。
しかも、何故か彼女がさっきから政孝に触ってくる。
何故だ。
何故俺に触る。
触るな。
頼むから触るな。
政孝は耐えるしかない。
なんだ、この拷問状態は。
この状況で、政孝が起きるとは思わないのか。
いっそ、起き上がって彼女を奪ってしまおうか。
政孝が思考を巡らせている間に、彼女の手はパタリと止まった。
そして、後ろから彼女の寝息が聞こえる。
ホッと息を吐いた政孝は彼女を振り返った。
これだから変態の彼女は困る。
そのまま政孝は静かに彼女に覆い被さった。ギシ…とベッドが軋む。
彼女は起きない。
彼女の安らかな吐息を政孝は奪う。
彼女が変態なら彼氏も変態になってしまうものなのだろうか。
政孝はふと昔の自分を思い出してみるが、彼女以外の女と付き合っていた時には寝込みを襲うようなことをしようとさえしたことはない。
政孝をこんな気持ちにさせるのはこの女しかいないのだと本能が告げている。
この女以外は要らない。必要ない。
彼女が起きてしまっても構わない。
彼女がどれだけ政孝に惚れているかは自惚れではなく、自覚している。
政孝がしたいと言えば、彼女は応えてくれるはずだ。
だが、自分だけ満足しても満たされないことは分かっている。
彼女と一緒でなければ意味がない。
そんなことを考えながらも、政孝の指は彼女の柔らかな膨らみの上で緩く動く。
彼女の唇から甘い呻き声が漏れた。
…たまらない。
菜々美は俺のものだ。
一生離さない。
逃げることは許さない。
政孝は菜々美を触り自分の独占欲を満たして満足気に微笑むと体を起こして元の位置に横になったのだった。