瞳が映す景色
――……
教科準備室の窓からは校庭が見下ろせて、大勢の卒業生たちが写真を撮り合っていて帰ろうとしない。
この子たちのために桜が舞っていたらよかったのに。今日のこの日を思い出す時、蕾もいいかもしれないが、ほころんだ花のことを幸せに語ってほしいと思った。
――あの大勢の中の何処かで、ちゃんと笑えていますよう――もう、願うことしか出来ないけれど。
「っ!?」
背後で気配がした途端に扉が開けられる音がして、勢いよく振り返る。
――……
「コトハ……だと思った?」
「……、澤、どうした?」
「うん。ちょっとね」
そう言ったまま黙ってしまった澤の次の行動を、オレはひたすらに待った。
「伝言……これを、片山先生にもらってほしいって。コトハが」
渡されたのは、卒業生の胸に咲いていた白い花。それに、淡い空色のリボンが結ばれていた。