瞳が映す景色
「そんなんじゃないから、困ったりしないでって。あくまで生徒として、お世話になった先生への感謝だから。だって」
「そうか……」
「きっと言ってほしくないだろうけど……コトハは、泣いてた。歯を食いしばる力が強すぎて血が滲んでも、まだ我慢するような子が、泣いたの」
すまない……。
――ああ。けど、ちゃんと泣ける場所があるのだと、安心もした。
受け取った白い花は、オレにとって唯一の。窓越しの空にかざしてみると、太陽の光が、花の輝きに負けた。
「卒業おめでとうと、伝えてくれるか?」
「うん。分かった。……片山先生……コトハと何があったの?」
そう訊かれるのは、やっぱり今でも――
「――ずっと、何も言わなかったんだな。澤も、 聞いてないのに、伝言持ってここへ来てくれたんだな」
「ん。何にも言わないよ、コトハは。だから、今日はワタシのおせっかい。強引に」
秘密だとは言っていた。けど、親友にさえずっと隠していたのは辛かっただろう。