瞳が映す景色

馬鹿だ馬鹿だと、ずっと言われ続けて道を歩く。


「ホント馬鹿だね。なんで勝手に全部決めるのさっ。相変わらず悪い癖。――あの子は飛ばせてくれる相手なんて求めてないよ? 自分ですることだって思ってる。それに、ゲンちゃんがそんだけ自覚あるなら問題は瑣末だった、と僕は思うね」


オレ次第っていうのは、多くに頷ける。……理不尽に、泣かせるようなことにはならなかっただろう。


でも、もう。


「今度そういうことがあったら、逃げるなよ?」


「そう出来たらいいですね。白鳥さんにまで見放されたら、ちょっと寂しいかも」


「おおっ!! ケンカしてたのに、そんな嬉しいこと言われたら許しちゃうじゃないか~っ、ゲンちゃん」


「どこがケンカッ!? っ、ちょっ! 肩組まないでっ」


「いいよねっ。女のことで言い合うのもっ」


力の差こそあまりなかったが、背丈の分、振りほどくのに苦労をした。やっと解放されたと思ったら、白鳥さんは破顔している。


「僕も早く幸せになりたいね、たったひとりと。そうしないと三十歳までに死んでしまう運命なんだ。ゲンちゃん助けてよ」


「短命にしては色々と図太いでしょう。それに……たったひとり、いなきゃおかしいと思うくらいには……イイ男ですよ」


恥ずかしくて顔を背けた。オレに出来る照れながらなど、せいぜいここまでだ。


「そう? じゃあ――藁科みたいな子がいいなっ」


……少し、前言撤回。

< 112 / 408 >

この作品をシェア

pagetop