瞳が映す景色
たどり着いたのは、合コン会場には似合わないレトロな扉の前だった。
「ここ入るよ、ゲンちゃん」
「助かった。休憩ですか? 腕、限界」
そこは喫茶店だった。丁寧に手入れをされた外観は、きっと店内もそうなんだろうと連想させる雰囲気だった。カフェよりかは、今は断然こっちの気分だ。この大量の荷物を置ける席だったらいいんだが。
「――さあ、どうぞ」
執事の如く、白鳥さんがオレのためにと扉を開ける。所作は完璧、服もそれなりにしたら職業そのものだ。
「いらっしゃいませっ!」
店内に入ってすぐ、元気のいい店員が目の前に立っていた。といっても、荷物で視界が遮られているから、見下ろす位置にいるらしいその人物は確認出来ない。
察してくれたのか、店員はオレの横に回り込んで来てくれて。
「荷物、手伝います」
「あっ、すみません。……」
……、
「えっ……澤?」
見下ろした店員は、卒業生の澤美月だった。