瞳が映す景色



たどり着いたのは、合コン会場には似合わないレトロな扉の前だった。


「ここ入るよ、ゲンちゃん」


「助かった。休憩ですか? 腕、限界」


そこは喫茶店だった。丁寧に手入れをされた外観は、きっと店内もそうなんだろうと連想させる雰囲気だった。カフェよりかは、今は断然こっちの気分だ。この大量の荷物を置ける席だったらいいんだが。


「――さあ、どうぞ」


執事の如く、白鳥さんがオレのためにと扉を開ける。所作は完璧、服もそれなりにしたら職業そのものだ。


「いらっしゃいませっ!」


店内に入ってすぐ、元気のいい店員が目の前に立っていた。といっても、荷物で視界が遮られているから、見下ろす位置にいるらしいその人物は確認出来ない。


察してくれたのか、店員はオレの横に回り込んで来てくれて。


「荷物、手伝います」


「あっ、すみません。……」


……、


「えっ……澤?」


見下ろした店員は、卒業生の澤美月だった。

< 115 / 408 >

この作品をシェア

pagetop