瞳が映す景色
「なんの話~?」
海堂も戻ってきて、オレはもうこの話をうやむやにさせようと試みた。けれど、
「うるさいっ!!」
「っ!?」
男三人で輪になっていたところ、突然の澤の怒声にオレたちは縮み上がった。
本当は、オレに蹴りの一発でも浴びせたくて仕方ないんだろう。その眼光は鋭い。けれど、その場で地団駄を踏み、必死に堪えてくれている。――確か、卒業式の時もこんなふうだった。
低い腹の底からの声で澤は言う。
「……いつまでも誰かを想って浸るのは幸せよ ね? でもそれは、何もしなかったことを美化してるだけだよっ。ワタシは……コトハが今どんな考えなのか、悔しいけど知らない。だって、このことだけは何も言わないから。どうしてあげればいいかも分かんない。……けどね、今の片山先生にはとりあえず腹が立つ」
「……すまない」
「それはワタシにじゃないっ! ……先生。コトハに謝らなきゃいけないことしたの? まだ謝れてもいないの? だったら、いつかでいいから、その言葉をコトハに伝えてあげて。ちゃんと、区切らせてあげて」
声は低くて、けれど、とても藁科を想っていた。