瞳が映す景色

「――分かった」


「だったらもういい。――でも、どうしても疑問。なんでコトハはこんな男を……」


本当にそうだ。いつでも藁科はオレを買いかぶってばかりだった。


「それを先生が言うなっ!!」


頷くと、最後にもう一度怒鳴られた。


怒りつかれた澤は、もうカラオケに合流するから店を出て行けとコートを着込み始める。その横では、海堂がいそいそと同じように支度を始めていた。


「今日は楽しかったよ。ゲンちゃん帰ろう。海堂、頑張れっ」


「っ、ああはいっ。海堂、またな。澤――ありがとうな。」


海堂には早く行けとせっつかれ、あんなに怒っていたのに、澤は笑顔で送ってくれた。




店の外へ出ると、足元には僅かに雪が積もっていた。


空を見上げると、雪は降り始めよりも細かなものに変わっていて。


明日は一面銀世界かもしれない。

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