瞳が映す景色

導きはなかったけれど、今日の白鳥さんはいつもよりも生身っぽくて、いつもよりいい男だった。


駅はすぐそこで、白鳥さんは電車に揺られて帰る。オレは歩くことにして、交差点で別れた。


粉雪舞う風景は、本当に、しんしんという音が響いているようだ。足元の柔らかい感触に少し癒される。




――そうだな。いいことも、きっとある。


藁科のためとか、そんな大義名分もつけてなら可能かもしれない。


ずっと、好きでいるのは簡単なこと。そう思えるくらい、藁科の存在はオレの中でずば抜けている。


今日でもっと好きになった――それは、あの子がちゃんと自分の進む道を選んでいて、確実に成長した姿を見ることが出来たから。


そんな気持ちのまま、逢えないまま、キレイなキレイな夢の中で抱え続けるのは可能だが、それは、あんまりに失礼な恋慕かもしれない。


オレも、このままじゃいけないのかもしれない。




ただ、もう少し……すぐにはなんて無理だから、もう少し……。


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①ー8・白い妖精
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