瞳が映す景色
「謝ることじゃないだろ。ちょっとピンチだったけど、そこは藁科とは無関係なことだ」
傷つける言い方にはならなかっただろうか。藁科が気に病むことじゃないと伝えたいだけなのに、言葉が見つからない。
「……先生で、いたかったんだ。藁科が認めてくれた場所を守りたかった」
救われたことを、ちゃんと証明したかったんだ。
電話の向こうから吐息が漏れる。
「――嬉しい。先生が、そんな深い場所を見せてくれるのって、初めてですね」
「前にも醜態さらしたじゃないか」
「あれは、通常仕様じゃなかったからノーカウント」
こんなにも普通に話せるとは思わなかった。もっと焦って、どうしようもなくなってしまうかと。
――、電話だから?
なら、電話でよかった。