瞳が映す景色
辺りに響くのは、ふたり分の吐息と雪の音。
「今日、逢えてよかった」
「はい。だから、色んなことに感謝をしましょう」
「そうだな」
苦しそうに話す藁科を感じてようやく我に返る。呼吸がままならない状態にさせてしまったことを謝ると怒られた。
「……謝らなきゃいけないこと、してないでしょ」
オレの胸に顔を埋めて素っ気なく呟く。そんなこと、逆効果だと分かっているんだろうか。また息が苦しくなるだけなのに。
「――なんで、オレのほう見てくれないの?」
服越しでも藁科の熱を感じる。雪なんか、一瞬よりも速く解かしてしまいそうな。