瞳が映す景色

①ー11・甘く甘く、響いていて

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①ー11・甘く甘く、響いていて
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――今は夜の七時。


私は、……片山先生の家から強制送還中。




遡ること三十分前のこと――


「暗くならないうちに帰ろう。なっ? 藁科」


「嫌ですっ。一晩中でも看病します。この目で見届けますっ!」


「……」


「私の家なら大丈夫ですよ?」


お姉ちゃんに協力してもらって、遠くの遊園地へ泊りがけで遊びに行ってることになっている。……こんなことは困らせるだけだろうから先生には言わない。でも、言ったら一緒にいさせてくれたのかな?


「もしも、夜中にまた熱が上がってきちゃったらどうするんですか? どうせまた、ひとりでどうにかしようとするんでしょ?」


「……」


……ほら、やっぱり黙り込む。図星の証拠でしょ? 先生。


世の一人暮らしの大半はそうしてるのかもしれないけど、いつもそうやって完治させてるんだろうけど……私がいるんだから、頼ってくれてもいいのに。


頼りになんか、ならないから……? そうやって思うのは、まだ早いの?

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