瞳が映す景色
……顔だけで評価することがこんなに多いなんて、これでも厳選しただなんて。
「疲れる……神様は不公平だ」
「えっ?」
「気になさらずに」
首から下も――はしょって、高身長で手足長くてバランスがいい――完璧な男は、あたしなら二歩で行くところのゴミ箱へ、なんなく一歩で到着した。
そのまま踵を返して再びベンチへ戻ろうとしていたけれど、あたしからは死角の道の先に視線を移して手を振る。
「あっ。早くしないと閉店ですよっ」
同時に重い駆け足がこちらに向かって近づいてきた。
「間に合った!?」
駆け足と声の主はお店の常連様だった。あたしがバイトを始めるよりずっと前からご贔屓にしてもらっていて、仕事に慣れないあたしにずいぶん優しくしてくれた仏のようなお客様。
「走らなくても林さんなら待ちますよ」
「若女将は優しいねー」
ただのバイトに若女将というのはやめてほしい。
「いつものでいいですか?」
「そうっ。ハンバーグ弁当でよろしく。若旦那は奥?」
「いつもそうじゃないですか。それに、若旦那じゃないと作れません」
「へえ。若女将は?」
「才能がないんだそうです。前に手伝ったら、二度と調理場に立つなと言われました」
「はっ、笑えるくらい仲良しだ」
「でしょ。だから、家では嫌がらせのようにソファでぎゅうぎゅうに隣座ってやります」
注文の品が出来上がるまで、林さんは空いているベンチに座り、先客と何やら談笑していた。
私は、その光景をカウンター内からなんとなく視界に入れる。