瞳が映す景色


名前を――白鳥誠一という。


市内の高校で英語の教師をしている。今年度は三年生のクラス担任をしているらしく、昨年度より忙しないように感じる。


眉目秀麗と表現したように、美形を具現化した外面は、とりあえずモテる。しょっちゅう言い寄られる話を自慢ではなくて愚痴として漏らしている。


ここで吐かねば何処で吐く!? と嘆かれれば、可哀想に思って聞いてあげてしまう。それは、一年前、向かいのマンションに白鳥さんが引っ越してきてしばらくしてからずっと続いている。


事実、白鳥さんにはそういった日常の談笑や愚痴、どうでもいい話を言い合える友達が極端に少ないらしい。己の嫌味な性格と女性関係トラブル、その容姿故にそうなのだと言っていた。


人柄――、一部を除いてはそんなに悪くない気はするけど、その他のことで、色々と反感を買いやすい人に意図せずなってしまうという点が上回りすぎるんだろう。


ここからは、私が勝手に知ったこと。


美形で軟派っぽく振る舞う白鳥さんだけど、結構努力の人だ。


毎日遅い時間まで、今みたいに部屋の明かりは点いていて、仕事をしている。校外持ち出し不可の類を学校でこなし、授業の資料作りや予習を持ち帰って深夜まで。


教師も予習するなんて、私は白鳥さんで知った。他の教師だってそうなのかもしれないけど、食事を作る手間を毎日省いてまでも取り組む姿は、結構な上位ランクだと勝手に想像する。


優雅な白い鳥は、水面下でもがくのだとカラオケ中モニターの歌詞であった。何の歌だったけと思い出す。確か、アニメ好きな子が歌っていたような。

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