瞳が映す景色
「うぅっ……激しく反省中の僕に、第二の我が家のマリア様が優しくない」
「唐突に話されたって理解不能なもので。――どうせ聞いてほしいんでしょ?内容によっては、優しい言葉のひとつくらいは」
腕捲りをしていたパーカーの袖を戻してから、店頭に出て看板の電気を消す。もうそんな時間だ。ふと、秋めいた匂いが空気中に含まれると思ったら、店の前を歩く帰宅中の人の中に、焼き芋をマイクみたいに持ちながら歩いている人を発見する。
腕時計に目をやった白鳥さんが一瞬驚き立ち上がった。他愛ない懺悔を閉店後まで続けられた記憶はこの一年ない。
今日は特別に聞いてあげると伝えると、珍しく申し訳なさそうに一度頭を下げてきた。
「でも、あたし助言とか無理だから」
小娘にそこまでの力はない。
「いいのいいの。聞いてもらえるだけで」
まるでそれが一番嬉しいかのように、白鳥さんがベンチにもう一度腰掛ける様子は無邪気だった。そして何かに気付いてもう一度立ち上がったかと思うと、自分が出したゴミを含めてから、設置してあったゴミ箱の処理を始めようとする。
「そんな必要なし」
「え~、でも~」
「話す分には問題ないけど、そんな光景見られたら、あたし若旦那に吊し上げだよ」
聞いた途端、白鳥さんは縛りつけられるように、ベンチに舞い戻った。