瞳が映す景色
変に自信に満ちてしまった白鳥さんには気づかないふりをして、そこからは牧師に徹する。
「前、言ったよね。クラス委員が面倒かもって」
「……――、ああ。言ってたかも」
確か、好意を寄せらていると迷惑極まりない顔で愚痴られた。
担任を務めるクラスのクラス委員で、これは良かった女子だ。そんな素振りは全く見せないけど自分には感じる!!――と、確か白鳥さんは断言していた子。
それさえなければ、自分を好きでさえなければ、本当にいい生徒なんだそうだ。高校生らしい高校生で、適度に遊び、面倒臭がる。授業にも委員にも程よいバランスで責任感を持ちながら、人懐こく頼り頼られ息苦しさを他者にあまり与えない、愛される、愛らしい生徒なのだそうだ。
「藁科がね……」
そうそう。名を藁科さんと言っていた。……このどうでもいいことに対してだけ発動される記憶力は、悲しくも、本当に覚えなくてはいけないことには役立ってくれない。
白鳥さんを好きだという藁科さんのことなら、やはり告白なんじゃないんだろうか。文化祭最終日なんて、バレンタインや卒業に次いでフラグがあちこちで立つ日なんだし。
「……もちろん、告白はされちゃったよね。藁科以外には」
「僕には決まった人がいますって広めればいいのに」
「う~ん……尾行とかされて迷惑かかったらシャレにならないよね」
てか、会ってる時点でどうなのさ?
「そうだね」
しかし、そういう事柄ではないと、長い睫毛は伏せられた。