瞳が映す景色
「後夜祭が始まるから、ゲンちゃんを呼びに行ったんだ」
またまた新キャラ登場。
この『ゲンちゃん』という人は、白鳥さんが担任を務めるクラスの副担任で後輩さんだ。いつも何かに悩んでいるような目をしていて、書道が得意で、真っ直ぐ素直な文字を書く男の人らしい。文字から性格が滲み出てるような人なんだけど、臆病者でツンデレだから憎まれ口しかきいてくれないらしい。
友達の少ない白鳥さんは、このゲンちゃんをいたく気に入っていて、只今絶賛お友達になってみせる計画進行中のターゲット。デレ部分を見る日を夢見てるらしい。
昔から、仲良くなりたい人には距離を置かれるのだという白鳥さんの交遊関係成立術は、引いていたら始まらないから押していくことにしたらしい。数年前から。
……ちなみに、あたしもターゲットのひとりらしい。下心を一切含まない『お友達になろうよ』なんて、あたしの人生では後にも先にもあのときだけだろう。
友達なんて、いつの間にか出来ていたし。
それが出来ない白鳥さんは、やっぱりバランスが悪い人だ。
「ゲンちゃんに嫌われちゃった?」
フルネームを知らないあたしは、同じようにゲンちゃんと呼ぶ。
「……ちょっとしつこくからかっちゃったから、少し嫌われちゃったかも……。っ、そうじゃなくて、ゲンちゃんのとこ行こうとしたら、藁科が前を歩いてたんだ」