瞳が映す景色
ようやく懺悔も流れに乗り出した。
「まあ、いても不思議はないよね。学校なんだし」
「まあ、そうだけどね。――藁科が、様子がおかしかった。けど、声かけて煩わしいことになっても嫌だから尾行みたいな感じになっちゃったんだよね」
「ふ~ん」
その尾行は、かなり近付いてみてもバレることはなかったらしい。
藁科さんの手の中には、クラスの出し物和服カフェで提供していたお団子があって、すぐ後ろを歩く白鳥さんには丸見えだったらしい。
そして、何やらぶつぶつ呟く声も聞こえてきたらしい。煩わしいくせに、声を拾える距離まで近づくなんて、バカじゃないだろうか。
右手と右足を同時に出して歩く姿は壊れたからくり人形みたいだったようだ。
全校生徒職員が校庭に飛び出しているものだから校舎内は静かで、もうすぐキャンプファイアが始まる空の明るさは徐々に夜の色を手繰り寄せてきていて、それが藁科さんの声をより際立たせていた。
白鳥さんの状況説明は上手で、まるであたしまでその場にいた感覚に陥る。
「『センセ』じゃなくて『先生』。言葉は最後まで丁寧に、って、まるで呪文みたいに、藁科は自分に暗示をかけてて。一緒に、緊張を解くおまじないとやらもやってたよ」
以前、他の女生徒から知ったものだと、白鳥さんはあたしにそのおまじないを教えてくれた。